第二話 壊れてゆくこの日常の中で(信者の弁)
「確かにさっきは貴方たちが死んでも構わないという思いで挑んだ者も多いと思う。
でも、私個人としては、出来れば殺したくはなかった。まぁ、実力的に杞憂だったけどね…。
この思いは、上にいるシドウ ワカナに関しても同じなんだ。」
「「実は、シドウ ワカナと神父は、メシア教 恭順の会が運営する孤児院で育った幼馴染なんだ…。
神父は実の兄妹みたいにワカナを大事にしていたし、ワカナもそんな神父のことを慕ってた。
私は世話人の一人で、そんな彼らを見守っていた。」
「ワカナは、10年前に悲惨な事故に巻き込まれる前までは、すごく気が弱くて泣き虫な、普通の女の子だったんだよ。
それがすっかり変わってしまって、他人に対してとにかく冷淡な人間になって…挙句が、連続殺人という大罪を犯してしまった…。」
「けど、それでも、私にとっては今でもあの子は大事なんだ。
ワカナが脱走したこのタイミングで、神父と共に私も大阪に赴任したのは、きっと神の思し召しだ。
私は討伐中にわざと失敗し、あの子に更正の機会を与えようと思ってた。」
「しかし、神父が来てしまえば全て台無しだ。」
「彼がワカナを逃がせるはずもない。
たとえかつて兄妹のように仲が良かったとしても、彼は代行者としてその勤めを果たしてしまうだろう…。
僕はこれ以上、あの人に大事な人を失ってほしくない。」
「だから頼む。すぐに逃げてくれ。それが駄目なら、せめて、あの子を殺さないでくれ!
生きてその罪を償わせたい。
身勝手な頼みだってことはわかっている。
代わりに、タマのことも今日のことはうやむやにさせてみせる。
あとの9人は方々のていで逃げ出した。顛末は私が報告次第でどうにでも誤魔化せる!」
回復させて戦力に引き込むことも出来なくもないが、3階に昇ろうとしたところで押し寄せる悪魔たちとの戦闘前に出し抜いて田代一はワカナの説得に向かってしまう。
(GM:もしもこれの二次創作があったなら、納戸さんがこう叫ぶでしょう。
「はははは!一方的に戦闘を押し付けられる痛さと怖さを教えてやろうか!」と)